予防経営とは
予防経営とリスクマネジメントの違い
予防経営と聞くと,リスクマネジメントのような概念を想起される経営者も少なくないのではないだろうか。
リスクマネジメントと予防経営は異なる。
はじめに、リスクマネジメントに関する概略について述べてから本題に入っていきたいと思う。まず、リスクマネジメントについて調べた結果は下記である。
リスクの和訳は、「将来のいずれかの時において何か悪い事象が起こる可能性をいう」(Wikipedia抜粋)や「危険の生じる可能性。予想通りにいかない可能性。」(コトバンク抜粋)とある。
要するに、『企業の損失や不利益になることを現時点における将来予測において想定できる不測の事態に備えた対策を講じること』と解して良いのではないかと言えよう。もう少し踏み込むなら『企業の成長に係る危険などを回避する対策』といっても良いと思う。そしてもっと訳してしまうならリスクマネジメントの概念とは企業存続のための「危機対策」と言ってしまっても過言とは言えない。
一方、わたしが本稿で述べたい「予防経営」とは、『経営者の抱える多種多様な経営上の顕在・潜在化している課題や問題点を明らかにし、その理解や認識を組織間で共有し合う環境を構築するプロセスやマネジメント』である。このプロセスやマネジメントである予防経営こそ、今日の企業の成長に欠かせないコミュニケーションや多様性の理解・認知の発展に繋がるという考え方である。
予防経営で大事なこと
予防経営で重要なことは、組織的すなわち経営者(社長)(以下「経営者」という。)と従業員(社員)(以下「従業員」という。)の双方での理解や認識を共通して一致させ、その情報を共有することである。本来、経営上の課題や問題というものは経営者だけが抱えるものでもないし、また従業員が直接的に抱えるものでもない。企業として、また経営していくうえで、経営者と従業員が一体して把握し解決に向けた活動を行うことが望ましく、あるべき企業経営の姿勢であり本来の事業活動といえると考える。
つまり、予防経営で重要なことは経営者と従業員が一体して把握し解決に向けた活動を行う企業環境や経営環境を目指していくことである。
このような環境や土壌(企業文化)を形成・組成していくことにより、経営者の働き方あるいは従業員の働き方の在り様や働き甲斐が見いだされたり改善されたりするような「働き方改善・改革」にも資するプロセス・マネジメントであると考える。
誤解を生ずる予防経営の考え方
経営を支援する実務家・支援家と問われて、会計事務所や税理士業務を想起する経営者は多いのではないだろうか。もっともその想起は外れておらず経営者に一番近い存在といっても過言ではない。
誤解を恐れずに述べるなら、彼らが適宜機能していれば日本の経済がここまで落ち込むこと(小規模・中規模企業の失速)もなく失われた年月も短かったであろうことは想像に難くない。すなわち外部パートナーとして信頼し相応の業務を依頼する関係構築が形成されていれば、今日のような企業の損失を招くこともなかったであろう。
これはわたし自身も常に留意する点であるが、経営者の真の依頼は、経営者の心の内に秘められており、その未だ顕在化していない部分に光を当てることこそが我々実務家・支援家としての真の業務であることを見過ごしてはならない。このことを理解せず表面的な業務だけを漫然とやっているようでは真の実務家・支援家とは言い切れないのである。
まさに誤解とはこの事で、我々実務家・支援家は失われた歳月を嘆く前に、経営者が真に求めていることを理解できていなかったばかりに多くの誤った支援(ミスリード)を行い、経営者を苦境に立たせてしまっていることを深く見つめ直さなければいけないと自省も含め考えるところである。
とくに毎月の企業の業績、経営判断の礎となる数値など、企業経営の羅針盤を司ると言っても過言ではない実務家・支援家のそれはとても大きな役割を担っており、その提示する財務諸表は企業の将来を計る唯一の光であり灯りであることを決して忘れてはいけないと思う。同時に受け取る経営者自身もその大切さに気付くべきである。そうすれば、互いの誤解は自然に解けると言えよう。
そういう観点からすべての実務家・支援家への警鐘として、経営者と真正面から対峙することは決して恐れることではないし、対峙せずに乗り越えられる信頼関係の構築は形成できない。真の課題に光を当てることはできないと知らなければいけない。わたしを含め我々実務家・支援家としての初心を今一度思い起こすべきであるし,忘れるべきものではないと存じる。
わたし(経営コンサルタント)の奨励する予防経営で得られるメリット
経営は偏った見方ではなく、全体を俯瞰しながら枝葉に焦点を絞っていかねばならないと考える。とくに今日の複雑・多様化する市場や経営環境においては、全体的な俯瞰に基づいた枝葉への視線を巡らす順序は見誤ってはいけないと考える。全体的に俯瞰しているからこその枝葉であり,枝葉だけの視点では目先の対処にしか過ぎないと言わざるを得ず、これを継続していても改善や成長には辿り着けないことを知っておくべきである。
さて、経営者には自社の経営について多くの課題や問題で頭を悩ませており,経営に真摯に向き合う経営者ほど、その悩みの種は尽きない。しかし、この悩みの種を素直に理解してくれている近しい関係の仲間を持つ経営者はそれほど多くない。自社の取締役や従業員でさえ理解する立場にはいてくれていないのが現実といえるのではないだろうか。もっとも取締役や従業員にも自社に対する何かしらの問題(不満)を抱えているのも現実であり、この問題(不満)の理解者の存在も不在であると考えられる。
わたしは、これらの思いの不一致や理解者の不在の原因は経営者目線による自社の経営課題や問題の共通認識が図られていないことに起因するのではないかと考えている。要するに、経営者は経営者の目線で、従業員は従業員の目線でのみでしか量られていない。情報の共有化がなされていないばかりに各々の悩みの種の解決が遠のいているものと考察する。そしてこの点においては経営者も従業員も異論は出ないのではないだろうか。
そこで提案したいのが、「予防経営」という考え方である。前述のとおり経営者は経営者の悩みの種を解消するために活動し、従業員もそれなりの問題意識(不満・不安)をもって活動しているようでは相容れる部分が少ない。厳しい言い方をすれば「すれ違いの連続」になってはいないだろうか。この悪循環が企業活動を失速させている大きな原因であると述べたい。
そこで取り入れていただきたいのが「予防経営」のプロセスとマネジメントである。
予防経営は『企業経営を失速させている要因(経営者と従業員のすれ違いの連続)を予防する対策』
予防経営の手順
予防経営をおこなうと、経営者と従業員との心のかい離は縮まります。
経営者の今の考えや感じていることを傾聴し、経営者目線での経営課題や問題点を聞き出します。経営コンサルタントは傾聴と同時に、経営者の真の課題や問題点に到達するまで深層を探っていきます。
経営コンサルタントは内容を整理し、表層化しているあるいは顕在化している課題や問題点と絡め、現在の課題や問題点として従業員と意見交換(コミュニケーション)を繰り返し、解決する糸口の共有化を図ります。顕在化している課題や問題点と絡めるのは、従業員に見えやすくするために、おこないます。
予防経営により、一体感をもって企業活動や経営・事業にあたることができ加速的に改善や成長の実益が得られるようになります。
この実益は経営者と従業員個々人それぞれに違っても、目指すべきものに共通性や一体感があることで、この感覚の共有は企業自身の成長に必ず資するものである。初めの一歩は経営者の悩みの種の深層を介するところからではあるものの、ひいては従業員へと波及する効力をもっており軽視するべきものではない。この重要性を予防経営の観点でわたしは経営者と伴走し、一社でも多くの企業の成長と発展に貢献したいと考えている。
最後に
さて、日々の経営において孤独を感じることはありませんか?多くの場合、経営者は孤独である(経営者の孤独への向き合い方はこちら)ことは当然です。孤独を感じたとき、何か課題に突き当たりそうになったとき、大久保事務所にご相談ください。
完璧はどこにもなく、経営も同じです。大久保事務所では、なぜ孤独なのか、どうすれば孤独の境地から解き放たれるのかを経営者と共に真っ向から考えていきます。課題や問題点といった物事を全体的に俯瞰し、枝葉までしっかり見ることで、本来の目標への道から外れることを予防します。